宝塚という組織

9月から宝塚歌劇団の女性団員のいじめのニュースがずっと気になっています。私自身が監査法人出身で内部統制を仕事にしてきたことや、今の仕事では人事と連携することが多いことから、組織としてどういう風にパワーハラスメントや過労死に向き合うか関心を持っています。

宝塚の華麗なイメージと陰惨な人間関係がクローズアップされていますが、いじめた上級生の責任もさることながら阪急阪神ホールディングスの責任が非常に重いです。一事業として宝塚歌劇団を運営しているのにほとんど劇団の人事に介入していない。

初めて知りましたが、亡くなった方は雇用関係ではなかったとのこと。業務委託契約にして雇用者としての責任を免れようと意図していたのならあまりにも浅はかではないでしょうか。雇用関係があったかは形式的ではなく実態をもって判断されるため、今回の件は人間関係を含め適切な労働基準法が定める労働環境があったかを問われるはずです。記者会見で「伝統」を強調されていましたが、過酷な上下関係に頼ったコントロールほど雇用主にとってコスパがよいものはなく、伝統を理由にして手のかかる組織改革を避けてきたということがよく分かりました。

また、「証拠をみせていただきたい」と言っていましたが、音声、録画等がなくても、状況証拠の積み上げは過去にも裁判で証拠として採用されています。遺族がLineのメッセージを提出されたそうですが、それを「証拠」だと思わなかったのなら、事態をなめすぎています。

2015年の高橋まつりさんの電通過労死訴訟では結局、電通と元上司が書類送検となりました。

厳しい指導を乗り越えてこそとか、その厳しさに感謝しているとか言う人がいますが、被害者の受け止め方の変化を期待もしくは強制していじめは正当化できません。法や倫理の枠組みから加害者が外れた時に加害者にペナルティが与えられないと、この行為が社会的に正しいという誤ったメッセージが生まれます。

来年、宝塚は110周年を迎えるそうですが、これを機に終焉してもいいんじゃないんでしょうか。そのぐらい気分の悪くなる会見でした。

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