佐藤ママの教育方法の限界とEsther Wojcicki

先日、ツィッターでホリエモンとヒロユキにチャットGPTで佐藤ママが絡まれているのを見ました。あんなきつい言葉を投げかけられて気の毒と思うと同時に、子供4人を東大に入れたという立派な実績があるので、ご本人も支持者もびくともしないだろうと思いました。

教育法の本を読むのが好きで、いろいろ読んできました。その中でEsther Wojckickiのhow to raise successful peopleが抜群によかったので、佐藤ママの本と対比しながら文章を書いてみたいと思います。

佐藤ママの本を読んだのは数年前で記憶も薄らいでいるので、私はこういう受け止めたというふうに理解していただければと思います。一番印象的だったのは娘さん(その時大学生になったかどうかと記憶)との会話で将来の夢はママのようになることだと言われたという箇所です。それを佐藤さんは自分の教育法が子供からも感謝されているという意味で書かれていたと記憶しています。

私の感想は、高校生もしくは大学生であるお嬢さんが持っている夢が社会とリンクしていないということにかなり驚きました。

入試に問われる知識をいかに効率よく詰め込んでいくか、成績を向上させるのかにページを割いておられ、その通りに生活されていたのであれば、社会に対して自分自身がどう接点や責任を持つか、金銭的に自立していくか、その必要性をお子さんは深く感じないのかもしれません。

とはいえ、佐藤さんのことを批判したいわけでは全くなく、あそこまで子供に全て捧げることができるのは尊敬に値します。ただ、大学受験と会計士試験を経験した私が言えるのは

本当に情熱を持てることを見つけないと人は突き抜けられないということです。何が好きなのか、その好きをどう金銭的に自立できるようにカスタマイズしていくのか。そこに時間を割かないと働き続けることはできません。いい大学を出ても資格をとってもやがて行き詰ります。

よく「会社員と違って専業主婦は評価されない仕事」という言葉を聞きます。誤解がある言葉だと思います。評価される会社員というのはごく一部です。頑張っても報われない仕事をし続ける会社員はざらにいます。

自分が好きだと思うことをしなければ、他人からの評価を気にし続けることになります。会計士合格後、監査法人に入社し、自分が優秀ではないことを思い知りました。監査の仕事が好きなのかどうなのかを気に掛ける余裕もなく人に置いておかれないように必死でした。今から振り返るとよくそんな辛い環境に10年もいたと思います。

社会に出ること=人との競争にさらされることです。評価されない悔しさや理不尽な人間関係に向き合う必要が出てきますが、将来への不安感で走り続けると心を病みます。

これに私が気づいたのは30代半ばでした。どうして自分がやりたいこと、リスクをとれることをもっと真剣にもっと若いころに考えなかったのだろう。

なので、子供達には若い時にこそ何を自分が動機づけるのか真剣に考えてほしいと思います。

Esther Wojckickiは3人の優秀な女性(長女はYoutubeのCEO、次女は医者、三女は遺伝子検査キット会社の創始者)のお母さんですが、How to raise successful peopleは育児のハウツー本でもなく、どうやったらアイビーリーグにいけるという本でもありません。壮絶な生い立ちとそこからの教育論を描いた本です。私は原本で読んだので翻訳されている出版本とは書きぶりが違うかもしれませんが、刺さった部分を書いていきます。

ユダヤ人家庭に生まれたEsther。父親は墓石彫刻師で母親は専業主婦で家庭は貧しかった。弟が1歳半の時に薬を誤飲してしまう。本来は救急先で低所得者も医者の診断を受けられるのに、たらいまわしにされる。No beds availableだと。そして、みてもらえたころには手遅れだった。

弟の死から両親は死ぬまで立ち直ることはなかった。特に母は打ちのめされた。

弟の死は母親のせいではない。

でも、男尊女卑の価値観の中で育った母は医療従事者の言われるがままだった。自分は母親のように従順にならない、権威に対して盲目的にはならない。貧困から抜け出してみる。

数十年後、高校でジャーナリズムを教えるEster。その時に大学教授を父親に持つ生徒に出会います。息子がアートに強い関心を持っていることを心配していた両親。Esterはそれを理解できると。彫刻師として貧困から抜け出せなかった父親を思い出すと、両親の不安はもっともだと。でもそれでも子供の持つ情熱を止めることはできない。20数年後、その生徒はグラフィックデザイナーとして会社を経営しはじめる。

才気煥発の女子生徒もいた。彼女には先生になる夢もあったが、両親は医者になる道を進めた。とても優秀だったのでアイビーリーグの医学部に進学し、医師国家試験に合格。誰もが医者になるのだと予想したその時、彼女は実習を延期してしまう。そしてその延期は20年も続き、ついに医師になることはなかった。両親を喜ばしたいから、勉強したくない医学を彼女は修め続け、ついにやめてしまったのだ。

子供は親の言うことを聞くだろう。なぜなら親の承認と愛情がほしいから。しかし、いつも幸せでいたいなら、自分の内なる声を子供たちは聞かなければいけないと。

貧困と学歴のなかった両親そしてそれに起因する弟の死。私が胸を打たれるのは彼女がそこから不安や恐れではなく、幸福こそが人の原動力になるという信念を持ち続けたことです。痛苦の思いを原動力にしてはいけない。そういうメッセージをこの本から受け取りました。

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