ゴッドマザーに相談する

うちの母は別名を「武将」という。この名をつけたのは主人の弟である。たまたま、私の父方のいとこと義弟は友人であり、いとこからいろいろ母の噂を聞いたらしい。

母は良くも悪くも自分のスタンスを変えることはしない。だからこそ母を好きな人は好きだし嫌いな人は嫌いだ。母にまつわるエピソードを紹介してみよう。

エピソード1:あんたの保護者会は時間の無駄

だいぶ刺激的な見出しである。私は良妻賢母をうたう中高一貫校に中学から高校まで通った。ミスチョイスとしかいいようがない。娘に自立を常日頃から言っていた母がなぜこの学校に娘が通うのを選んだのか全く不明である。さてこういう学校の保護者会はいわゆる進学校のようなギラギラしたものではない。懇親会の形をとる。なにせ卒業生8割の進路は系列の女子大なのだ。勉学よりも礼儀作法が重要なのだ。あの頃、既に山一証券が破綻しバブルははじけていた。しかし、女の子の王道は女子大を卒業し、銀行、商社の一般職で就職して結婚というのがまだまだ信じられていた。

さて、見出しの言葉はその保護者会に出た後、帰宅するなり母が私に言い放った言葉である。保護者会では基本的に以下を話し合ったらしい。

- 子供の成績
- 子供の素行
- 年間行事

普通である。何がそんなに頭にきたというのだ。「子供の成績のことばかり話してくだらないわよ」というのが母の結論であった。私は思った。集まる保護者も専業主婦のママたちである。そのママたちがまさか世界情勢について語るわけあるまい。政治経済について語る方がむしろお門違いである。

以後、母はこういった懇親会には出なくなった。

 

エピソード2:それで収入はあるの?

冒頭に戻ろう。父方のいとことの仲が決定的に悪くなった事件がある。母が我慢できないこと。それは人を見下す人間と女癖が悪い男である。いとこはそこまでひどくないのだが、やや親分肌が過ぎる時がある。正月に我が家に遊びに来た時のことだ。いとこは自分が事業を拡大しているという話をしだした。本業の他に空手を教えだした。みんなが自分に頭を下げて習いたいと言ってきた。それは事業と言えるのか、甚だ疑問だったがいとこは気持ちよさそうに語っている。私と父はふんふんと聞いていた。父にとってはいとこは大事な一族の跡取りである。父は「長男教」の信者だ。我が家には男の子が産まれなかったから、いとこは一族の名を継ぐ大事な跡とりだといっていつも丁寧にもてなしていた。

しかし、母は長男教を鼻で笑う人である。いとこの話を聞いているそばからいきなり「それでもう空手はどのぐらい利益が出ているの?」と具体的な事業計画を聞きだしたのだ。時期は正月である。みんななんとなく今年の抱負をふわふわと語りたいのだ。別にいとこだって大きく自分を見せたいだけなのだ。しかしあいにくいとこは1.女癖が悪い、2.人を見下しがちという二つの地雷をもっていた。

正月からいとこは顔を真っ赤にしてどれぐらい自分の道場に人が集まっているのか話し出した。「でも1回500円でどうやって利益出すの?」母の悪い癖だ。1回500円で利益が出ないことぐらい皆分かっている。父が最後に「俺も習いに行きたいな」と言ってその場をなだめた。この事件をいまだに、いとこは根にもっているのであろう。

さて、この「武将」ならぬゴッドマザーに私はさっそく今回のことを相談した。ゴッドマザーもすでに70歳に突入している。以前旦那の「資格熱」について愚痴ったら「女にうつつを抜かすよりよい」「資格に夢中になるぐらいかわいいものだ」という返事だった。

しかし、今はその時と状況が違う。「その資格ってどのぐらい価値あるの?」ときた。

- 家族が一緒に過ごすことが最優先課題
- 年収は下がってもシンガポールで転職してもらえ
- 資格を取った後に転職すればよい
- 資格を取るのを待っていたらいつになるか分からない

というのが結論であった。確かにわが夫には数々の資格に挑んだ結果、未踏になった記録しかない。

さすがに母でも単身赴任が良いという結論にはならなかった。ただ、「年収が下がっても転職したらいいではないか」というあたりが長年あまり「仕事」が得意ではない父を支えてきた母らしい助言である。

 

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